1994年設立の Mondriaan Foundation(モンドリア‐ン・ファンデーション)では美術、デザインや美術館を金銭面でサポートしています。例えば Witte de With(ウィッテ・デ・ウィット現代美術センター)では、年150万ギルダー(約7500万円)のうちその4分の1をこちらから受けています。ビック氏の Duende(デュエンデ・スタジオ)もこちらからのサポートがあります。日本の財団の場合は、年に一回、11月にしか審査を受け入れないのに対し、オランダでは随時受け入れ、財団によっては3ヶ月に一回審査したりするのでリアクションも早く、展覧会を企画しやすいということです。
美術館やギャラリーといえば、いつも問題になるのはその財源です。そのスポンサーのつきかたは様々。20年前からアートはエンターテイメント化してきています。現代のモダンアート化現象です。例えばロンドンのテートギャラリーなども、その注目は集客数に結び付けられています。オランダ Witte de With(ウィッテ・デ・ウィット現代美術センター)では年間 80,000人のビジターがありますが、まだまだ成功しているとはいえない数だとのことです。展覧会がエンターテイメント化していくのは、ニューヨークのギャラリーやテイトギャラリーを見て分かるように、どこから財源を確保するかが影響しているといいます。そのため入場者収入に頼らなくてはいけないという現実もあります。
例えばニューヨーク市では、商業性が高く、また企業などのスポンサーも多いため、企業側も集客を求め、エンターテイメント的なアートやインパクトの強いアートが好まれます。商業的であるが故にギャラリーの数も多く、コレクターにもパワーがあり、だからこそギャラリーにも影響を与えて活動が盛んになっています。
一方、オランダでは国や市からのサポートが多いため、アーティストやアート関係の機関にとってその必要性は少ないといいます。オランダでは、形のないアートやプロジェクトもの、物に固執しない体験的アートが多く見られるのもそのためでしょう。アートのプライベートマーケットは驚くほど小さく、ギャラリーが少ないだけでなく、ビジネスとしてのマーケットが小さいのは、政府のサポートの影響力が大きいからでしょう。
ギャラリーといってもそのほとんどはアムステルダム市内にあり、そこに置かれている作品もほとんどが同市のライクスアカデミー、アトリエ出身のオランダやインドネシアのアーティストによるものです。隣国のベルギーと比較してもプライベートコレクターはオランダでは少ないのです。
オランダでのキューレターの使命、それは「新しいアーティストを探し出すこと」です。金銭的にサポートしてくれる政府からの要請は「より若い人々に魅力的になれ」ということ。オランダは国籍の違うアーティストにも開かれており、有名な人でなくても新人の展覧会を比較的受け入れてくれます。また、国は小さいのに、作品を露出していける場所も多くあるということです。
ちょっと前までは税金に芸術っ作品の物納といった形もとり入れられていました。オランダのアーティスト自身も精神的に自立していて、自分たちでスタジオを運営したり自分たちで展覧会をオーガナイズしたり、彼らの体制は受身ではありません。
オランダや北欧では、世界的現代美術の流れの中でも突出した国際的若いアーティストが多いのはなぜでしょう?こんな質問もでました。
アーティストにとって文化的背景は重要であり、その影響は大きくなります。オランダでは、政府が経済的にサポートしており、アーティストにとって経済的困難は少なくなります。また、オランダではスマートメディアやマスメディアが盛んで、その影響力も強く、それを利用することで人々の興味をそそり、動員し、人々にどこに何があるかというインフォメーションを提供しています。日本のメディアではどちらかというと、情報を流すことに徹底してしまっており、メディアが情報戦争の場となってしまっています。そのため、新聞における文化欄スペースも少なく、書き手、読み手、考える人が少なくなるのです。トピックスをプレビューだけでなく、レビューとしてとりあげられるようになれば、自然とアートと一般人が対話する形ができてくるのですから。
最近ではウェブサイトといったエレクトロニクスを駆使した情報の広がりにより、インフォメーション=情報は事前に知り得ることができます。だからこそ、今後はクリティシズム=批評が面白くなっていくのです。情報の流布によりテリトリーという仕切はなくなり、その時に実際に作品を見られるということが非常に重要になってきます。
今回のシンポジウムの印象ですが、アート分野でのIT関係の発展がキーポイントになっているように思いました。アートを見に行く前にちょっとインターネットで調べるだけで、容易に大量の資料を得ることができますし、もちろん現在進行中の活動等もアップツーデイトに知ることができるのですから、それを手段として活用しない手はないでしょう。