裾野市民文化センターにて講演 2002年12月13日(金)、晴天に聳え立つ富士山が、オランダから来日された児童作家のクロムハウトさん、2メートル近い身長のあるお友達のイリックさん、それから沼津ご出身の児童作家である末吉さんご夫妻を迎えてくれました。午前中の講演は裾野市民文化センター。裾野市母親クラブと裾野市立南児童館の皆様のご協力で−オランダの子どもの本を語る−リンデルト・クロムハウト講演会が開催されました。当日は80人を越える視聴者に、展示即売された絵本もすべて完売。サンイ会は盛況を呼びました。クロムハウトさんの母国語はオランダ語ですので、児童書の朗読はオランダ語になりましたが、あとは英語でのスピーチになりました。大人向けの講演会ということで、英語のほうが直接理解してくださる方もいらっしゃるのではないかというクロムハウトさんのお心遣いからです。
『ペピーノ』 はじめに、『ペピーノ(朔北社)』についてのお話しして下さいました:ペピーノとは、クマの着ぐるみをつけた少年のことです。サーカスで毎日、クマの役を演じるのが務めでした。観客はクマのペピーノを見るのが大好きでした。でも、ペピーノ少年は幸せではありませんでした。もうクマでいるのは嫌だ、僕は少年でありたいと思っていたからです。そこである日のこと、サーカスを後にすることにし、クマの着ぐるみを抱えて丘へと歩いてゆきます。初日は空き家に宿泊しました。寒かったのでペピーノはクマの着ぐるみを身につけて暖をとります。横になり、何かやわらかいものに寄りかかり眠りにつきました。そして、次の朝、目を覚ましてみると…
『ペピーノ(朔北社)』をオランダ語で朗読
始13頁:もう一度のびをして、ペピーノはごろりと寝返りを…
終16頁:まったくとんでもない偶然でした。
こうして、ペピーノはサーカスを去ったのですが、クマの着ぐるみを脱げなくなってしまいました。
画家(イラストレーター)との協力について ペピーノは私(クロムハウト氏)が大好きな本です。この本は、イラストレーターのヤン・ユッテさんと一緒に作り上げました。私にとって、イラストレーターと共に仕事をするということは非常に重要な役割を果たします。良質の本においては、本文と挿絵が互いにストーリーを語り合います。片方なしでは成り立たないのです。時に、絵は本文と別のストーリーを語ってくれます−二つのストーリーが一つの本にあり、もちろんその二つのストーリーは常に切っても切り離せない関係なのです。ほとんどの場合、ストーリーの着想が思い浮かんだら、まずイラストレーターと話し合いをします。イラストレーターがその着想に夢中になってくれるようだったら、そこでかき始めます。ヤン・ユッテさんとは一緒に組んでかれこれ25冊以上の本を作りました。最初の和訳本は15年ぐらい前に末吉暁子さんが『真夜中の動物』と題して翻訳して下さいました。それからこちらが最近出版したばかりのビルとウィルになり、大親友についての短編集になります(スライド)。さて、ストーリーの着想を思いつくのは私だけとは限りません。ペピーノの場合は、ヤン・ユッテさんからでした。ヤンさんはイタリアのトスカーナ地方の丘にいるクマについての本を作りたいと思いました。その場景をスケッチして私に送ってくれたのです(スライド)。そのスケッチをデスクの前の壁に貼り付け、見つめることにしました。クマが見えました。電車が見えました。そして考え始めたのです。電車にクマ。これら二つの結びつきは何だろうかと。たぶんこのクマは最初電車の中にいました、そして電車はまさに去ってゆくところです。ではどんな電車でしょうか?移動式サーカス?そしてクマですが、本物のクマでしょうか、それとも…クマの着ぐるみを身につけた少年でしょうか?そうだ!私はそう思い書き始めました。そんな時に、ヤンさんは私に言いました:森の絵を描きたいと思っているんだけどどうかな?そこで私は森の中にいるペピーノと黒いくまについて書きました(スライド)。そこで今度は私が言いました:僕の好みのローマ教の修道院について書きたいなと。いいねえ、そう言ってヤンさんはこの絵を描いてくれました(スライド)。ご覧のとおり、私にとって、本作りとはイラストレーターと作家とのチームワークの賜物なのです。
ちびろばくんシリーズについて 絵本に関しては、作家とイラストレーターとのチームワークはより密でなければいけません。PHP出版からは絵:アナマリー・ファン・ハーリンゲンさん、文:私で「ちびろばくん」についての絵本を出版しています。では、どのようにして「ちびろばくん」の作品が生まれたのでしょうか?実はすべては、この本「なんて かいてあるの?」から始まっています。このストーリーでは、さるくんが手紙を受け取るのですが、自分で読むことができません、そこで他の動物さんたちを訪ねて手紙になんて書いてあるのか探ってゆくのです。そのなかの一つの動物であるおさるさんがロバを訪ねます。ストーリーでは、一頭のロバについて語っていますが、アナマリー・ファン・ハーリンゲンさんは驚いたことに、1頭の大きなロバを描いただけでなく、小さなロバもつけてくれました。小さなロバは本文には書かれていませんので絵だけに登場します(スライド)。この絵を見て、私は小さなロバを見つけ、すっかり気に入ってしまいました。そして思ったのです:私はこのかわいい小さなロバについて書いてみたいと。かくして、「ちびろばくん」の作品が生ました。ちびろばくんについての最初の本は『おおきくなりたい、ちびろばくん』でした。これからその本文を朗読しますね、そしてさっき私が話したことを覚えておいて下さい:時にイラストは本文とは別のストーリーを語ってくれると言うことです。
『おおきくなりたい、ちびろばくん』の朗読(全頁、スライド)
一つの本に、二つのストーリー。実は、文章には書いていないのですが、かあさんろばは心配で各ページにかくれて息子のちびろばくんを見守っています。大人は得てして気づかないのですが、子どもは意外と目ざとく見つけるものです。そこで、みなさんと一緒に一ずつ、どこにママろばがいるかスライドをもう一度見直してみます。
『Meester Max in de dierentuin(仮訳)マックス先生、動物園にいく』について 『マックス先生、動物園にいく』のストーリーは、クラスで動物園を訪問する保育園の先生のお話です。マックス先生は動物園で虎や麒麟などを見られるのを楽しみにしています。ところが、動物園についても子どもたちは予想に反して全く思いがけない行動をしでかします。まずはお菓子を食べたと思ったら、トイレに行きたがり、あげくの果てには公園で遊びたがります…かわいそうなマックス先生。結局、子どもたちは一日中、ほとんど動物を見ることはありませんでした…それが文章の中のストーリーです。しかし、絵は別のストーリーを語ってくれています。なぜなら、そこにはマックス先生が行ってみたいと思っていた動物たちをすべて見てとることができるからです。さらに、その動物たちは子どもたちと同じ行動をしています。マックス先生が虎を見たいなあと思っているとき、子どもたちはトイレにかけこもうとしているのですが、それがこの絵になります(スライド)。マックス先生が麒麟を見たいなあと思っているとき、子どもたちはのどが乾いているのですが、それがこの絵です(スライド)。ですから、繰り返しになりますが本文とイラストは別のストーリーを語っていますが、それぞれは関連付けられており、切っても切り離せない関係になっています。
『ちびろばくんと誕生日のヤッキー』について スピーチの最後に、ちびろばくんシリーズの『ちびろばくんと誕生日のヤッキー』を朗読したいと思います。このストーリーの着想は、私自身がベビーシッターをしていた時に、印象に残った少年をイメージして、その記録を遡ることで思いつきました。ある日、ヤッキ−はお友達に誕生日プレゼントを買ったのですが、すぐに、そのプレゼントをあげるのが嫌になってしまいます。とっても素敵で、素敵過ぎて、プレゼントするのがもったいなくなってしまったからです。自分だけのものにしたいと思ったのです(スライド)。以下本を朗読。
おしまい
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向田小学校にて講演 3年生以上のみなさんとPTAのお父様、お母様が体育館に集合してくださいました。今回の講演は主に子どもさん向けということで、クロムハウトさんは自分の言葉であるオランダ語でスピーチしてくださいました。机の前に立ってみんなに語りかける口調は迫力があり、彼の世界に吸い込まれるような気分になりました。
ペピーノの本を朗読された後、クロムハウトさんは質問タイムを設け、質問を受けたあと、クロムハウトさん身が生徒さんに質問をなげかけました。末吉さんのがんこちゃんをテレビで見たことある人、本を読んだことある人?本を読むのが好きな人?嫌いな人?ねえ、本を書こうと思ったらまずどうしたらいいと思う?などなど。そして、それから児童作家がストーリーを思いつくまで、つまり、僕がお話を書くまで、ということについて語って下さいました。
そう、きっかけはね、旅行に行くのがいいんだよ。では、さっそく僕と一緒にイタリアに旅行してみましょう、ということクロムハウトさんがイタリアのローマに行って訪れた2つの教会からヒントを得て書いた本『Het geheim van de afgebeten vingers(仮訳)かみ切られた指の秘密』について、ストーリができるまで、ちょっとはらはらどきどきする写真を交えながら紹介してくださいました。残念ながら和訳はまだでていません。
ローマのサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ教会の正面にアーチが並んでいます。その左側のアーチの所に、真実の口があります。教会に付属して石で彫られて大きな顔。それは映画「ローマの休日」にも登場してアン王女がどきどきしながら手を入れた「真実の口」でもあります。実はこの「真実の口」、嘘を付いている人が手を入れると指をちょきんと切られてしまうという伝説があります。そこで、クロムハウトさんは町の人にその由来を聞いてみました。ところが、誰に聞いてもはっきりとしたことをしっている人がいないではないですか。だったら僕が、この「真実の口」にまつわるお話を書いてみよう!と思って書き始めたそうです。それには次に訪問した教会もヒントに欠かせませんでした。
通称、骸骨寺(Santa Maria Immacolata Concezione)、ここは約4000体のカプチン派の修道僧の骨が、洞窟の中にびっしりと収められている教会です。それは一見普通の二階建ての教会。入り口は2階にありますが、中二階にもう一つ秘密に通ずるドアがありました。そのドアを抜けて階段を降りてゆくと…なんとそこには6つの洞窟があったのです。そのうち5つの洞窟は骨がびっしり積み上げられていました。一つ目は頭蓋骨が、二つ目は腰骨が、三つ目はすねの骨がといった具合です。でも、最後の一つの洞窟には骨が全然ありません。ただ一体、天井から鎌と天秤を手に持ったお姫様の白骨のみが吊り下げられています。このプリンセス、どうやら昔本当に実在したということです。こうして、このお姫様がこの最後の洞窟を指の骨で埋めるために「真実の口」の後ろに座って指をちょっきんと切ることになります。残念ながら時間がきてしまい、最後にクロムハウトさんのリクエストで末吉先生の最近出版された『ほねほねくんとなぞの手紙』を朗読して下さり、この講演は終わりました。