フート氏がゲント市内で企画した「Over the Edges」は、通常ならば美術館に来ないような人々にも芸術に親しんでもらいたい、そんな願いをこめて、ゲント市そのものが展示会場として選ばれ開催されました。1986年に同市内で市民の住居をアート活動の場として企画した「Chambre d'Amis」にならい、世界各国から芸術家を招き、市内の「曲がり角」をテーマに芸術作品を展覧したのです。
「曲がり角」は町の構造的なアクセントになっています。また都市は中世、ルネッサンス時代から現在のアパートまで、様々な建造物の集合体であります。忠実にギャラリーや美術館といった施設内に収められた絵や芸術品そのものに集中した直線的な芸術とは違い、都市の中にはトライアングル性があります。ではそのトライアングル性とはいったい何をいうのでしょうか?
その1■状態■.....都市の中には社会的、政治的、それから文化的状態がある
その2■訪問者■.....都市への訪問者の中には、芸術を目的としない人もいる
その3■建築の背景■.....建築物そのものにも意味があり、絵や芸術品だけに忠実になれない
これら三つの要素を配慮した上での新しい見方、それは、社会的ネットワークをふまえた見方であって、考え方の解放であり、都市自体を新たに体験できるという利点があります。家と職場、家と電車といった日常生活内での道のり、目的のものだけしか目に入らない生活を変えることにより、活性化させようと試みたのです。
その個性あふれる解説で70枚にも及ぶ「Over the Edges」のスライドを紹介したフート氏。この企画に日本人として参加したゲント市在住、現地で活躍中の小林正人氏自身の作品解説も加わり、講演会では現代美術の解釈が紹介されました。フート氏の求める芸術、それは一昔前まではサッカーにしか興味の対象がなかったような人々にまで芸術に関心を示してもらうといった活動であり、すなわち現代美術への挑戦でもあるのです。
Q&Aでは、こんな質問がありました。
「現代美術を、友達になかなかわかってもらえない。」
するとフート氏はこう答えました。
「現代美術とは、言うならばそう、敵。だから、理解してもらいにくいもので当然なのです。」